マンション管理コンサルティング

分譲マンションの建物調査・診断や大規模改修工事の実施にあたっては、単に建築・設備に関する知識・技術にとどまらず、区分所有法やマンション管理適正化法等の法的知識に加え、入居者への細かい配慮など特有の専門ノウハウが要求されます。当協同組合では、建築・設備に関するハード面でのコンサルティングのほか、大規模改修工事の実施に際してのマンションの運営管理上の問題に対するアドバイスやご提案も行っています。

以下、よいマンション管理を行う上でのポイントを紹介しましょう。

 

管理運営への積極的な参画

分譲マンションは、色々な人たちが共同で住まう住宅形態です。したがって、各世帯が一定のルールを守りながら、共同の財産であるマンションの維持管理をしていくこととなります。

その維持管理を行う主人公は「管理組合」です。管理組合は区分所有者(※1)全員で組織されています。(そのマンションに住んでいるかどうかは問われません。)

賃貸で部屋を借りて住んでいる場合には組合の構成員にはなれません。議決権は持てませんが、管理組合の総会の議題に利害関係をもつ場合などは、総会に出席して意見を述べることができます。

管理組合を脱退することは任意にはできません。区分所有権を失うこと(売却すること)以外に、脱退の方法はありません。なぜなら、区分所有者は、維持・管理などについて区分所有者の共同の利益を守る義務があり、維持・管理などを行うために、区分所有者が全員で構成する団体が管理組合だからです。

逆に区分所有者になれば(分譲マンションの所有者になれば)、その時点で自動的に管理組合に加入したことになります。

一般的に、分譲マンションでは区分所有者の中から理事と監事を選任して、日常の管理の執行は理事が構成する理事会において決定し、理事長が管理組合の業務を統括する役割を担います。理事の任期は通常1年~2年とされている例が多いのですが、理事に選任された場合は、管理組合の業務に積極的に参画し、諸課題の解決にあたって頂きたいと思います。管理を委託している管理会社に全部を委せきりでは、いつか歪みが出てくるものです。

 

管理規約を守る。管理規約を改正する。

管理規約は、区分所有者がそのマンションにおける専有部分や共用部分について、また、共同生活を快適に営むために定められるマンション管理の基本ルールです。

区分所有者(占有者も含む)は、区分所有法と同様にこの管理規約も守らなくてはなりません。

管理規約の設定・変更等は、管理組合の総会を開き、管理規約の設定、変更等の内容について議案として提出し、区分所有者総数及び議決権総数の各4分の3以上の賛成により行うことができます。また、区分所有者全員の書面による合意があった場合にも、管理規約の設定、変更等行うことができます。

管理規約に定める事項は、区分所有法で「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」と定められています。管理規約の内容はこの区分所有法の規定に合うものであることが必要であるほか、区分所有法と異なってはならない事項、個々のマンションで任意に定めることができる事項などの制約があります。

※1:区分所有
マンションの専有部分(※2)を所有している状態。
※2:専有部分
室内空間とその表面のことです。区分所有者が自由に改変することのできる部分です。
※2:共用部分
専有部分以外の建物と建物の附属物を指します。良好な居住環境の維持のために統一した管理となる部分です。なお、どこが共用部分かについては、各マンションの管理規約において規定されています。

 

適正な管理費・修繕積立金の設定

管理費は、マンションの共用部分の日常的な維持・管理のために使われる費用です。その内訳は概ね下記のようになっています。

  • 管理人人件費
  • 共用部分にかかる水道光熱費
  • エレベーター・電気・防火・給排水設備等の保守点検料
  • 火災保険その他の損害保険料
  • 清掃費
  • 備品費および消耗品費、植栽維持費
  • 通信費および事務費
  • 軽微損傷箇所の補修費
  • 管理委託費(管理会社などへの委託手数料)

この中で、管理委託費については、費用削減の見直しを行う管理組合が増えてきました。特にバブル期に建てられたマンションでは、販売時に管理会社が設定した管理費が相当高めに設定されているケースが多いのですが、マンション購入者はその管理費が当然の(所与の)ものとして受けとめられてきました。(マンション購入時に管理費が高いというクレームを申し入れても仕方がないのは事実です。)

管理費とは別に設定されている修繕積立金は、計画的な修繕工事(※4)を行う際に必要な資金について、工事を行う際に一括して徴収するのが困難な場合が多いため、長期修繕計画(※5)に基づき、定期的(通常毎月)に各区分所有者から一定額を集め、これを管理組合が積み立てるものです。

見直しを行って削減できた管理委託費の部分を修繕積立金に振り替えて修繕積立金の確保を行っているマンションも増えてきています。

※4:計画的な修繕工事
マンションは年月と共に劣化するので、この劣化状態を新築時の状態に戻すため一定期間(通常5~15年程度)ごとに修繕工事を行う必要があります。
※5:長期修繕計画
建物は年月が経つと共に必ず経年劣化が起こります。建物が作られた当時の状態を維持していくために、おおむね向こう20~30年程度の間に、いつごろ、どんな修繕を行っていけばよいか、また、その実施のためにはどの程度の費用が必要となるかを定めるのが長期修繕計画です。
長期修繕計画の中では、外壁補修・屋上防水・給排水管取替え等を対象として、それぞれの建物について必要な修繕周期と工事金額を定め、その工事金額に見合う毎月の積立金を設定します。適切な大規模修繕工事を実施するために、また、そのための正しい資金計画を立てるためにも、長期修繕計画は約5年ごとに見直しすることが必要になります。

 

総会・理事会の活性化

総会はマンション全体の維持・管理の内容等について、管理組合としての意思決定を行うために開催するものです。

総会の開催は、理事長が区分所有者全員に呼びかけて開催します。総会は会計報告、業務報告、予算案及び業務計画案を決議することから、毎年一定時期に開催する必要があります。また、定期的に開催する総会の他に、総会で決議すべき事項が発生した場合には、理事会の決議を受け、臨時総会を開催することが必要です。

総会の成立要件は区分所有法では定められていませんが、標準管理規約では議決権総数の半数を超える組合員の出席を条件としています。(書面や代理人による議決権の行使は出席とみなす。)議事の決定方法は基本的には過半数の多数決です。しかし、規約の変更などの重要事項については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。また、区分所有者全員の書面による合意があったときは、集会の決議があったものとみなされます。

理事会は、管理組合の業務を行う業務執行機関で、総会にかける議案の内容等を審議する機関です。理事はそのマンションに住んでいる区分所有者がなるのが理想ですが、区分所有法では役員の選任方法は特に規定されていませんので、管理規約の中で定められた方法を採ります。

 

コミュニティの醸成

マンションでいわば共同生活を送る上で色々な問題が生じてきます。特に騒音問題、ペット問題、駐車場問題は、マンション管理の3大問題といわれ、どこのマンションでも根本的な解決が難しい問題です。

  1. 【騒音問題】
    他の住居からの音がうるさくて困っている。

    マンションの居住者の誰もが加害者となったり被害者となり得る問題です。
    まず、居住者同士が話し合ったり、管理組合で議論するなどして、お互いに他の人に迷惑をかけないルール作りと住まい方を考えることが重要です。音を出すような行為の自粛や時間についての配慮、フローリング等のリフォームの内容の制限、絨毯を敷くなどの工夫をすることが基本的な解決策となります。このようなことを使用細則に定めることが解決に繋がります。

  2. 【ペット問題】
    ペットの飼育を禁止しているのに飼っている人がいる。

    規約等でペットの飼育を禁止している場合は、そのルールを守らなければなりません。
    ただし、単純に禁止としても実際に飼育をやめさせることは難しいため、居住者間で時間をかけて話し合うことも必要と考えられます。つまり、どのようなルールがあれば迷惑をかけないで済むかということについてルールを決めることが必要です。

  3. 【駐車場問題】
    全戸に1台以上の駐車場があるマンションは大変レアです。

    したがって、公正な駐車場の使用方法のため各マンションで様々な取り組みをしています。駐車区画の抽選を毎年行ったり、外部の駐車場との差額を管理組合が負担したり、来客用の駐車場を昼間に使用しない区分所有者の協力を得て確保したりなどです。
    これらの問題はマンションの個性に応じた解決法をとっていかなければいけないものです。管理組合全体でうまく解決に向かえば、良好なコミュニティを醸成することができます。

 

大規模改修工事の実施に当たって

マンションの新築後、通常12年~15年を経過した時点で、外壁塗装、屋上防水、バルコニー・廊下・階段の防水、玄関扉などの鉄部塗などを内容とする「大規模改修工事」を行うこととなります。

最近は、エントランスへスロープを設置するなどバリアフリー化工事を併せて行う、防犯カメラの設置などのセキュリティ対策を設ける、エントランスを自動ドアに交換したり模様替えするなどして資産価値の向上を図るマンションも増えてきました。

大規模改修工事は、マンションの管理組合にとって快適な居住空間を再生するためのメイン行事といえます。大規模改修工事の時期が近づいてきたら、2年くらい前から専門委員会(修繕委員会)を管理組合内に立ち上げます。大規模改修工事の発案から実施までは理事の任期を越えて数年にわたりますので、理事会だけで対応するのではなく、専門の組織を作って進めるのがベターです。

管理規約に専門委員会の規定がない場合には、総会決議によって組織することとします。(マンション標準管理規約では専門委員会を設置することができる定めとなっています。)

また、専門委員会は、調査又は検討をして理事会に具申する立場ですから理事会との位置づけと委員会での調査検討状況や理事会の決定がタイムリーに全戸に伝わるようにするとスムーズな合意形成ができ入居者全員の協力を得やすくなります。権限を明確にして情報を入居者と共有する(みんなに知らせる)ことが重要です。